インバさんちの過去ログ。
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バカップル ~初恋が実る確率~後日談。 |
雨竜の恋人は長身でエキゾチックな顔をしている。 (パーツがはっきりとしててかっこいいんだよなあ) そんな思いを込めてうっとり見上げると、それだけで恋人…茶度泰虎は真っ赤になった。 茶度からすれば雨竜の潤んだ目は劇薬だった。 夜のカラクラパーク。 雨竜の父親から交際を禁じられ、監視の目をつけられている現在。 キスの余韻で赤くなった唇を茶度のシャツに押し付けながら雨竜は聞く。 「時間はまだ大丈夫かい?」 遠くの森から通ってくれる茶度に遠慮がちに尋ねると、暖かい声音が返ってきた。 「これ、差し入れ…。たいしたものじゃないけど、夜食と朝食」 料理を苦としない雨竜は、以前から茶度に細々したものを作っては振る舞っていた。 「早く一緒に食べられる日が来るといいんだけど」 しょんぼりとつぶやく雨竜の肩を引き寄せ、茶度は言った。 「ああ…。いつかお義父さんもわかってくれる」 決意を込めた声音に雨竜は伏せていた顔を上げた。 「ぜったい?」 でも…と拗ねた声で雨竜は続ける。 「茶度くんの事だからさらってくれる時も、あの人に挨拶しそうだ。そんな事しなくていいからね」 真摯な言葉が嬉しくて、ポッと赤くなった雨竜は、その顔を隠すように茶度の首にしがみついた。 「そうしたら毎日…」 言い淀んだ雨竜の顔を覗き込むと、何故だか怒ったように眉間にしわをよせている。 「石田?」 何でもないと言いながら、可愛く睨む恋人に少し焦る。 彼の心を隅々まで理解出来たらいいのに…。 よほど困った顔をしていたのだろう。雨竜は愁眉を解いて、ふふ、と笑った。 「無理しなくていいよ。僕は片思いに慣れてるんだ。君が今ここにいるってだけでものすごい幸運だもんな。贅沢は言わない」 にわかに信じられない事だが、雨竜はずっと茶度に恋をしていたというのだ。 茶度からすると、ある日激しく好みの人間が服を着て(というか着ていなかった)現れた。 すぐにでもなだれ込みたいが最初が最初だったので『カラダが目当て』と言われないよう腹筋が全力投球している。 (しかし……) 抱き寄せた雨竜は茶度の太ももに座していて、その柔らかな誘惑が嬉しくもつらかった。 細く頼りな気な首筋が闇に白く浮かび上がり、清冽な色気を醸し出していた。 「さ、茶度くん…!」 無意識にその首筋に吸い付いてしまっていたようだ。 新月の弱い光に雨竜の表情が読めなくなる。 嫌われたかと焦る茶度は伸ばしたくてたまらない自分の腕をグッと遊具に掴まる事で誤摩化し、頭を下げた。 「すまん、つい…。……もう帰るから怯えないでくれ」 引き止めようとしてくれる気配を感じ、まだ嫌われた訳ではない事に安堵した。 ゆっくり、進んでいこう。 決意を込めた目で笑いかけ、茶度は立ち上がり背中を向けた。 「じゃあ…。グエッ!」 いきなり着ていたシャツを引っ張られた。 「帰ったら許さない…!」 細い腕のどこにこんな力が…と思う強さでしがみつかれ、押さえ切れなかった欲望が息を吹き返す。 「君はいっつもそうだよね! 何でそんなに大人なんだ…! 僕ばっかり、こんなに……。どうせ本気で僕を好きじゃないんだろう…」 涙を振り絞って怒る雨竜を抱きしめる。 「む…」 触れる唇から可愛い声の呪詛を聞く。 「石田…すまない…。その…」 何が原因だか分からないが、大切な恋人を怒らせてしまったのだ。 茶度のキスに宥められた雨竜は、やがてか細い声で言った。 「茶度くん、僕の事…本当に好きなのかい?」 雨竜はまた言い淀んだ。 「茶度くんは、僕といても…その…」 首筋まで赤く染めながらの言葉を茶度はようやく理解した。 「石田は嫌じゃないのか?」 コク、とうなずいた恋人の体はさっきより熱い。 「あ…!」 ビクッと、後ずさる体をきつく抱いてさらに存在を伝えると 「…し、して…」 恥ずかしそうに紡がれる言葉は、茶度が装っていた理性を完全に打ち砕いた。
end. |
※「初恋が実る確率」もちのアホなまんが