インバさんちの過去ログ。
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「なぜあの程度の質問でうろたえるんだい、阿散井くん」 数誌分のインタビューを終え、恋次と雨竜はスタジオの狭い廊下を歩く。 「今、恋をしてる?」の問いにまともな受け答えが出来ない位。 (でも助かったな…) 挙動不審になった恋次のおかげでごまかせたが、実は雨竜自身もうろたえていた。 茶渡とはお互い忙しい芸能生活の中、 二人の時間をなかなか増やす事が出来ない。 (茶渡くんは僕に会いたくならないのかなあ。大して想われてないとか) 告白した方だから、ふられる恐れも強い。 「辛気くせえツラ」 雨竜の頬を恋次が指でつつく。 「ユニット相手が君でよかったかも」 黒崎一護とは顔を合わせる度になぜか ケンカになってしまうのだ。 「オレ帰るわ。またな」 ふいに恋次が慌てて走り出した。 「何だろう…あ! 茶渡くん!」 すぐ横の出演者控え室から茶渡が出てきた。 雨竜は嬉しくなって茶渡の広い胸に飛び込んだ。 「君もこのスタジオで撮影だったのかい? 僕はさっき東京に戻って来たんだよ。 今朝、君に電話したんだけど…」 矢継ぎ早に話す雨竜を太い腕が抱きしめた。 首すじに顔を埋め、ぬくもりに身を委ねる。しかし……。 「どこ触ってるんだっ、茶渡くん!」 シャツの中に手を入れてきた茶渡が、 迷う事なく雨竜の弱点を探り当て指を這わす。 「あ…!」 行為に慣れていない上、久しぶりの愛撫に、敏感な雨竜の躯は大きく跳ねる。 硬い掌が背中を撫で上げ、ゾクッと 震えた瞬間、太腿の間に茶渡の脚が入り込んできた。 「こんな所じゃ…」 廊下から聞こえる音が気になって抵抗すると拘束は一層強まった。 「阿散井と上手くやっている様だな」 キスの手前まで唇を寄せてきた茶渡が唐突に恋次の名を出した。 「え…あ、ああ、うん」 訪れない唇を待って見上げた茶渡の情がどこか不機嫌だ。 「……君、もしかして…」 問いかける瞳を避け、茶渡の唇は細いうなじへ移動してしまった。 「…すまん、何でもない」 (もしかして嫉妬してる…?) 押さえ込まれていた手を外し、茶渡の髪を撫でる。 「会えなくてさみしかった?」 無言で小さく頷く茶渡も自分も同じ 不安を抱えていたようだ。 「僕にもキスしてくれ」 触れるだけの口付けをした雨竜に対 し、茶渡は舌を絡めて深く長いキスをした。 それがただ嬉しかった。
end. |