インバさんちの過去ログ。
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「ぼろぼろじゃないか!」 ここは都内某所の撮影スタジオ。今はBLEACHというドラマを撮っていた。 「いくら頑丈な躯でも気をつけないと。ほらシャツのボタンを開けて」 役柄に添うような性格の二人は、カメラが回っていなくても大型犬と飼い主のような関係だった。 「大きなケガは無いようだね」 撮影を見学していた雨竜はカットの声がかかると同時に傷だらけになった茶渡を自分の控え室に連れ込む。 「まったく。やり過ぎだ、彼は」 実家が大病院のためか、雨竜の処置は的確で迷いがなかった。 「石田、自分でするから…」 茶渡泰虎は嘆息して雨竜に背中を向けた。 いつも自分は目の前の生き物に逆らえない。 「終わったよ、こっちを向いて」 「え…」 きれいな箱に数粒のチョコが入っていて、雨竜はその一粒を摘んで茶渡の口元へ押し付けた。 「くち、開けて」 言われた通りにすると、ころん、とチョコが舌の上に乗り、ほろ苦い甘さが口内に広がった。 「美味しいだろう?」 「いい出来だと自分でも思うよ」 雨竜の黒い瞳が茶渡を真っ直ぐ射貫いた。 「味見もしたし、試作品だって完璧だったんだ」 言い募る雨竜の顔が紅潮し始め、目元が潤んできた。 「か、感想とか言えよ!」 茶渡は上体を雨竜の方へ寄せた。 「いいよ」 茶渡はゆっくりと華奢な身体を引き寄せた。
end. |